何故うちの会社の人は「部下の育成」に熱心なのか
3行まとめ
- うちの会社は部下育成に熱心な人が多く、昔から不思議に思っていた。
- 同僚や先輩と話して気が付いたことは「部下のため」だけではなく、「自分のため」にも部下育成を行っている人が多かったこと。
- 性善説に沿った仕組みにはどこか限界があり、直接的に、そして具体的にメリットを感じられる仕組みこそが重要だと考えさせられた。
--------------------
何故うちの会社の人は「部下の育成」に熱心なのか
私には入社した頃から疑問に思っていたことがある。
それは、何故こんなにも私の会社には「部下の育成」に熱心な人が多いのか、ということだ。
私は新人コンサルタント時代から何人もの上司と仕事をしてきた。
100%とまでは言えないが、殆どの上司は「部下の育成」に熱心であり、部下の成果物のレビューのために夜遅くまで働いていた。
私:何でうちの会社の人は揃いも揃って部下育成に熱心なんだろう?
同僚A:そうだなぁ。やっぱり評価項目の1つに入っているという点が大きいんじゃないか?昇進やボーナスにも影響してくるしな。
私:うーん、そんなものかな。私の評価項目にも「部下育成」はあるけど、比重で言ったら大したことないし、私自身そんなに気にしてないんだけどな…。
同僚A:まぁ、確かにそうだな。となると、社員の質なのかな。採用で部下育成への熱心さを評価項目にしているとか。
私:可能性はあるけど、採用もそんな万能ではないでしょ。
同僚A:うーん…。
その後、面倒見が良く優しい先輩Bさんにも同じ質問をぶつけてみた。
先輩B:評価項目に含まれていることは、多少なりとも影響していると思うよ。何かしら自分に利があれば無意識に反応する人も一定数いるだろうし。
私:やっぱりそうなんですかね。じゃあBさんも評価項目に含まれているから部下育成に熱心なんですか?
先輩B:俺?うーん、ちょっと違うかな。俺の場合は部下の成長が単純に楽しいんだよ。今まで出来なかったことが今回は出来た!みたいなのに感動するのさ。
私:Bさん、なんという人格者なんだ…!でもやっぱり評価項目に含まれているからではないんですね。Bさんみたく、自分に利が無くても部下育成に熱心な人もいるし…うーん…。
先輩B:でも、広義の意味では私も自分に利があるから部下育成を行っているとも言えるぞ。なぜなら、俺の場合は単純に「楽しいから」だからね。ある意味で自分が楽しい思いをするために部下育成をしているようなものだよ。
私:どれだけいい人なんですか!
先輩B:そんなことないよ。同じ考えの社員は他にも一定数いるぞ?…そうだな、敢えて言うなら、「評価項目」よりも「目の前の成長」の方が直接的に結果が見えるという点が大きいのかもしれないな。
私:直接的?
先輩B:そう。評価って、半年~1年でに1回のイベントだし、ボーナスや昇進にダイレクトに反映される訳ではないしな。結果のイメージが難しいんだよな。それと比較すると、「部下の成長」は目の前で実感できるしな。やりがいは感じるよ。
私:なるほど…。
納得感は増したものの、部下育成に喜びを感じる良い人がそんなに多いのかモヤモヤが晴れぬまま、上司Cさんにも相談してみた。
上司C:Bさんらしいな(笑)でも部下育成に喜びや達成感を感じる人間が一定数いるという点は正しいと思うぞ。
私:あぁ、そうなんですね。
上司C:ただな、その他のモチベーションで頑張っている人がいるのも事実だ。
私:その他のモチベーション?
上司C:凄く単純な理由だよ。部下育成をすると自分が楽になるからだよ。
私:え?自分が楽に…?でも部下へのレビューやフィードバックってものすごく時間が掛かるし、むしろ手間が掛かることの方が多いと思いますが…?
上司C:短期的にはそうかもしれないが、長期的な視点で見るべきだよ。極端な話、部下が今の自分と同じくらいのレベルに育ってくれれば、自分の仕事を部下に回すことができる、ということだ。
私:あ…。
上司C:まぁ、その空いた時間を休憩時間に使うのか、一つ上の仕事に充てるのかは人の性格にも依るけどな。どちらにせよ、自分に選択肢が生まれることは間違いない。つまり、やはり部下育成は自分のためなのだよ。
私:そうだったのか…!納得しました。あ…でも待てよ。その理論だと、うちの会社に限らず、どこの会社でも皆部下育成に熱心になりませんか?
上司C:確かにな。そこはうちの会社の仕組みがいいのかもしれない。
私:仕組み?
上司C:文化と言った方が正しいかもしれないな。例えば、部下に自分の仕事を任せられるようになった途端、次の仕事が割り振られたらどうだろう?
私:自分にとって自由な時間が無くなる…?
上司C:そう。部下を育てても休むことも一つ上の仕事を狙うことも出来ず、ただただ次の仕事が振られるだけであれば、その人にとって部下育成をする意味はなくなる、つまり、部下育成のインセンティブが失われるのさ。
私:納得しました。何故うちの会社の人は「部下の育成」に熱心なのか、その理由は評価項目や社内文化など部下育成が直接的に、具体的に「自分のため」だと感じられる仕組みがあることなんですね。
上司C:そうだな。悪い意味ではなく、性善説に頼った仕組みは限界があり、いつか崩壊する。部下育成が重要であるなら、会社としてきちんとそのことを表に出し、かつ、部下育成が本人にメリットを生む仕組みを作ることだよ。
了。
2018/07/20(金) 総アクセス数:290